多くの日本企業にとって事業のグローバル展開は急務となっています。なかでも、アジア諸国とのビジネスの比重が大きくなってきています。このことは、2014年末におけるアジアにおける現地法人数が全体の66.5%を占めていることでもよくわかります(出自:2015年経済産業省)。そのため、多くのビジネスの専門家が、アジアにおけるビジネス戦略の必要性を説いています。
実際、アジアに注目した経営戦略やマーケティング戦略に関する書籍やWEBサイトは数多く世に出ており、多くのビジネスに携わる人々、アジアの特色を生かしながら、ポーターの基本戦略やアンゾフの成長マトリクス、またコトラーのマーケティング戦略などを活用しています。
しかし、グローバル・コミュニケーションに必要な英語などの言語に焦点をあてた経営戦略、あるいはマーケティング戦略についての書籍などは、私たちの知る限り、見かけることはありません。企業や団体がその従業員に英会話を学ばせたり、あるいは海外留学や海外派遣をおこなったりするなど、個々人のベースでコミュニケーション力の向上を計っているというのが現状ではないでしょうか。
そこで、本協会はコミュニケーションという視点でグローバル戦略を構築していく、という企業・法人向けセミナーを提供していきます。海外の企業との直接的な取引だけでなく、現地法人を通じた海外企業との取引、海外市場におけるマーケティング戦略、海外の現地法人における人事政策など、海外ビジネスには必ずコミュニケーションが絡んできます。このビジネスコミュニケーションをより効果的におこなわないとビジネス戦略自体が成り立たなくなります。
その意味で、本協会が取り組んでいる、世界の様々な英語(世界諸英語:World Englishes)の理念の普及と実践、そして、組織として整合性のあるグローバル・ビジネスコミュニケーションがなされているかを精査する「言語監査」(Linguistic Auditing)と、グローバル・ビジネスコミュニケーションコンサルティングの提供は互いに深い関連性を有しています。つまり、世界諸英語の理念を組織全体で共有し、ビジネスコミュニケーションの現状を組織全体および部門ごとに体系的に精査(言語監査)することで、ビジネスコミュニケーション上の問題点を洗い出し、そのうえで、企業あるいは団体の経営戦略と適合した効果的なビジネスコミュニケーション戦略を構築していくからです。
本協会の企業・法人向けセミナーでは、効果的なビジネスコミュニケーションに求められる事項、たとえば、企業や団体のイメージを正確にかつ説得力を持って伝えること、それぞれの国や地域の文化に基づくビジネス慣習に敏感になること、多様化と一体化(ダイバーシティとインクルージョン)を理解し実践すること、などについて、コンサルティングを提供していきます。
一例として、Webサイトにおける会社概要や会社の経営方針に関わる日本語の内容をどのように英語で表現すればいいのか、について考えていきましょう。ただ、直訳するだけでは、こちらが伝えたいことが正確に伝わらない可能性があります。特に、翻訳会社に翻訳を丸投げすると、ビジネスの内容を知らない翻訳者が大変な誤訳をする場合もあります。翻訳会社に依頼する場合でも、どのように関係部門が関わっていくべきか、組織的な対応をあらかじめ決めておく必要があります。さらに、取引相手の文化や言語要素を加味していくことも重要となります。英語の表現は世界共通だから、取引相手国がどこであろうと関係ないと考えるのは正しいとは言えません。「世界諸英語」と言われるくらい、世界には様々な英語があります。その国や地域の文化や母語の影響を受けた英語です。その国の文化や母語を効果的に英文に取り入れることで、よりスムーズで友好的な取引をおこなうことが可能になるのではないでしょうか。
取引相手の文化や母語だけではありません。私たち日本人の文化を反映した英語表現もビジネスコミュニケーションには有効です。たとえば、ビジネスレターにおける敬称にも日本語を使った英語が有効になることもあります。Mr.あるいはMs.の敬称を使う関係から親しくなると、ファーストネームを使うことが一般的ですが、その中間的用法として日本語の「さん」を使って、“John-san”と表現するのも親しみを感じさせることができます。
このように、世界諸英語をベースとして、組織的に「言語監査」をおこない、それに基づいてより効果的で全社的に整合性のあるグローバル・ビジネスコミュニケーション戦略を構築することで、企業や団体の正しいイメージを発信することができるだけでなく、取引関係の親密化にも貢献することができることになります。
こうしたセミナーに限らず、幅広いコンサルティングを提供していきます。